本論文は、教科書収録教材を含む戦争を話題にした複数の作品について、日米の小中学生の読みを調査し、戦争文学教材の読みに影響する要因について、社会文化的要因と教材要因に着目して考察した。まず、社会文化的要因として、日米の児童生徒が想起する戦争と戦争に対するイメージに違いがあることを明らかにした。また、登場人物の心情を想像する読み方は日米で共通してよくみられたものの、作品や書き手を評価する読みは米国の児童生徒に多く見られることも明らかにした。次に、教材要因として、『せんそうがやってきた日』は、戦争が物理的な被害だけでなく心に傷を残すことに目が向けられること、具体的な教訓を引き出す傾向があることを明らかにした。一方、『ウサギ』は、異文化や異なる種、価値観の対立、戦争で生じ得る自然環境破壊に着目し、戦争についてより多角的に考える生徒がいたことを明らかにした。